増田順一氏の「親御さんがビックリしない」発言について今更振り返る

2019年7月7日ゲーム

ポケットモンスター ソード・シールド」において行われるとされている「ポケモンのリストラ」を発端とした騒ぎは、一頃に比べるといささか静まっているように感じられる。とはいうものの、依然として話題にしている人もいて、未だに収束する気配は感じられない。

上の記事を公開してから、事態は一向に動く気配がなく、日本では株式会社ポケモン(通称「株ポケ」)やゲームフリーク(通称「ゲーフリ」)といった公式側からの発表・声明等は一切出されていない。そのことに苛立ちを隠せていなかったり不信感を募らせていたりするファンは、決して少なくない。

ただ、ゲームフリークに関して言えば、この騒ぎ以前から好ましく思っていなかったファンもいる。特に、「ポケットモンスター サン・ムーン」以降の制作姿勢については問題が多く挙げられていて、実際のゲームそのものも過去作に比べるとあまりよろしくないというところから、今なお槍玉に上げる人も出てくるくらいだ(これについては当記事では取り上げない)。

  

そんな中、昨年の11月16日に発売された「Let’s Go! ピカチュウ・イーブイ」(通称「LPLE」)について、とあるゲーム雑誌における増田順一氏のインタビューでの発言が物議を醸す、もといゲーマーたちの失笑を買うことになったのは、記憶に新しいところだろう。

  

元の発言

週刊ファミ通2018年8月2日号」に掲載されたインタビューで、その発言が載ることとなった。

増田 たとえば、グラフィックをあえてリアルにし過ぎず、ファンタジーらしさを出すことで、まわりでゲームプレイを見ている親御さんがビックリしないような配慮をしています。イメージとしては、子供がリビングでプレイしていて、お母さんがそれをキッチンから見ていて、安心できるゲームですね。

(週刊ファミ通2018年8月2日号から、太字稲葉、黄色強調は原文)

この字面を見て、感の良い方々は、すぐにこの発言の異質さに気づいてしまうとともに、ゲーフリのゲームの至らなさ等について、事あるごとに 「親御さんがビックリするだろ」(略して「親ビ」とも)などと揶揄するようになってしまったのだ。

なお、どうしてこの発言が出たかと言えば、LPLEというゲームが、「Nintendo Switch」という、「New 3DS」はおろか「WiiU」よりも高性能なゲーム機に対応したものであるにもかかわらず、グラフィックが2、3世代前ではないかという批判、不満の声が数多く挙げられたからである、ということを申し添えておく。

  

「親御さんがビックリしない」発言のどこがおかしいか(概略)

この発言のどこがおかしいかについては、既に様々なブログ・SNS等で指摘されているが、具体的には以下のようにまとめられる。

  • 今の子供たちの親たち(20代、30代の方々)はテレビゲームをバリバリやっていた世代に当たる
  • そもそも、その親たちの中には、「ポケットモンスター 赤・緑」などを発売当初にプレイした人々も数多い
  • LPLEは実質「赤・緑」のアレンジ作品にあたるので、むしろリアルプレイ世代を驚かせるのが筋ではないか
  • 増田氏自身の一般家庭やテレビゲームに対する価値観が全然アップデートされていない

  

時代背景等について簡単に解説

確かに80年代や90年代はテレビゲームに対する風当たりが強い時期であり、しかもドット絵が主体だった。3Dゲーム時代に突入したのが「セガサターン」や「プレイステーション」が出てからのことで、90年代後半にようやく定着するに至ったに過ぎない。そんな中、初代ポケモン「赤・緑」が1996年2月26日にゲームボーイ用ゲームとして発売された。

しかし、今や2010年代も終わりになろうかという頃、ゲームは既に多くの人々にとって日常的なものとなっている。しかも、グラフィックについては、3D全盛、ポリゴンモデルが当たり前になっている(最近の「ロックマン」シリーズのようにあえて2Dドット絵を採用するゲームもあるにはあるが)。「ポケモン」シリーズにおいても、2013年発売の「X・Y」を皮切りに3D化へと舵を切っている。

「X・Y」からLPLEの発売を迎えるまでの5年間、さらに「オメガルビー・アルファサファイア」「サン・ムーン」「ウルトラサン・ウルトラムーン」という3種のポケモンゲームを発売し、3Dゲームについてもそれなりにノウハウを培っているであろうという頃、3DSと比べて性能も容量も格段に高く、できることが大幅に増えているはずのSwitchにおいてグラフィックの稚拙さが指摘されてしまう。それがいったいどういうことか、各々でご賢察願いたい。

そこに増田氏の「親御さんがビックリしない」発言である。各方面からは「親御さんがここ最近やってきたであろう他の作品と比べてグラフィックが稚拙であることにビックリするのでは」などという声が相次いだ。

いずれにせよ、増田氏は現代の「家庭」や「親」がどういったものかについて全く想像できておらず、風当たりが強かった時代のまま、価値観が硬直していた可能性が非常に高いことが、この発言で明らかになったのである。

  

発売後、LPLEはどうなったか

この記事をご覧になっている方々にはもう言うまでもないことだが、一応その後について書いておく。

LPLEが発売されて以降、売りにしていたシステムの一つ「ポケモンGOとの通信」が非常に不安定で、最悪、送ったポケモンが消滅してしまうという報告がSNSなどで相次いだ。おそらくゲーフリの制作陣もそのことについては把握していたはずだが、結局このバグについては今なお修正されていない(他の一部バグについては修正アップデートが施された)。

しかも、登場ポケモンが「赤・緑」の151匹に加え新種2匹だけという、近作と比べるととんでもない少なさである上、戦闘ではなく捕獲を主体としたゲームシステムも単調すぎてすぐ飽きるという有様のため、発売後数日で話題性は別のソフトに奪われてしまい、盛り上がりは収まってしまった。

増田氏自身はLPLEを「本編」と明言していたが、このような状況から、当作が外伝的位置付けと見なされることも少なからずある

  

なお、上記不都合について、「ポケモンGO」の方からは対策のためのアップデートが施されたものの、根本的な解決には至っていないのが現状である。

「ポケモンGO」 開発担当のNIANTIC社も、内心では呆れていることだろう。

  

最後に:数多くの親御さんをビックリさせた(させることになる)増田氏らゲームフリークの責任は大きい

上述のように、去年発売のLPLEでさえ、いわゆる「ガッカリゲー」と評される出来栄えであったし、それ以前の「サン・ムーン」「ウルトラサン・ウルトラムーン」の評判も全般的にあまりよろしくない。それにもかかわらず、「サン・ムーン」でディレクターを務めた大森滋氏が、今年11月15日発売予定の最新作「ソード・シールド」においてもディレクターとして名を連ねているというところ、依然として、上記発言を行った増田氏本人が実質上のトップとして居座っているというところから、最新作の出来が不安視されるのも、無理のない話であった。

そこに、E3でのインタビューがきっかけとなって、冒頭の記事に書かれてあるように「ポケモンリストラ騒動」が起こってしまう。海外のゲーマーを中心に、ゲームフリーク制作陣に抗議の声が何度となく寄せられるとともに、グラフィックやモーション等の稚拙さについて数多くの指摘がなされるようになった。

当記事の冒頭でも触れたとおり、「リストラ」については既に海外では声明をあげているが(内容についてはさておき)、日本では未だに謝罪の声、「リストラ」の説明すらない(増田氏が個人のTwitterで触れているのみ)。この状況が続けば、今後、何も知らされていない数多くの親御さんやお子さんたちがビックリすることになるのも、時間の問題だろう。

もしこのような事態に陥ってしまったとしても、それはゲームフリーク制作スタッフの責任である。おそらく、被害もかつてないほどになるだろう。ゲームの制作会社としての地位、評判は地に落ちるものと予想される。

  

「ポケモン」という一大ブランドを築き上げたゲームフリークが、自らの手でブランドを失墜させるのだとしたら、それこそ今後永遠に語り継がれるであろう大失態になる。それだけは、それだけは何としても止めていただきたい。「赤・緑」以来、20年以上もの長きにわたってポケモンと付き合ってきた一ファンとして、心からお願いしたい(もっとも、既にブランドは地に落ちかけているのだが)。