【乗車記】定期運行時代の「ムーンライトながら」号の思い出(大垣←→東京)

鉄道

大垣駅に停車中の「ムーンライトながら」(JR東海373系電車)

もう10年以上前の話になるが、定期運行終了前(2008年10月某日)に「ムーンライトながら」号に乗車したことがある。そのことについて、この記事で少しだけ思い出話をしようと思う。

 

列車概要

「ムーンライトながら」の記されているLED発車標(大垣駅4番線)

「ムーンライトながら」とは、大垣駅と東京駅とを結ぶ夜行の快速列車のこと。全車指定席である一方、当然のことながら「青春18きっぷ」が利用できる。そのため、同切符の利用可能期間中には、常に席がすぐ埋まる状態であり、臨時の「ながら」号も運行されることさえあった。

ただし、「全車指定席」とは書いたが、下りについては指定席の有効区間は豊橋駅までで打ち止めとなっており、豊橋駅から大垣駅にかけては全車自由席となっていた。これは、豊橋駅の名古屋方面への始発列車を兼ねた運用になっていたからである。その分、同区間における停車駅も上り列車と比べれば格段に多い(臨時「ながら」は上り下りとも全区間指定席である)。

列車自体も、定期運行分についてはJR東海の特急用新車(373系電車)が充てがわれており、普通のロングシート車などと比べたら、快適な旅路となるようになっていたのだ(一方、臨時「ながら」は当時から「国鉄183系電車」もしくは「国鉄189系電車」が使われていた)。

また、列車運用の都合および乗車率の問題から、下り列車については3両分を名古屋駅で切り離すようになっていた

 

感想:深刻なガラガラ具合

空席が目立つどころの話ではなかった「ムーンライトながら」車内

私の乗車した時期は、「秋の乗り放題パス」がいわゆる「秋季版青春18きっぷ(3回分)」だった頃で、私もこの切符と指定席券を手にしていた。当初は、そこそこ混んでいるのではないか、と予想していた。

にもかかわらず、上記写真の通り、席は全く埋まらない。大垣を出て、岐阜を過ぎ、名古屋を過ぎ、豊橋を発車しても、新たに乗車してくる客はほぼ皆無と言ってよかった。それどころか、全車指定制であることを知らない(もしくは失念していた)乗客が間違って乗ってきたという有様である。

下り列車についても、東京を出て、横浜を過ぎ、小田原を過ぎ、静岡を出ても、やはり席はほとんど埋まらない。豊橋駅を過ぎたあたりから人が入ってきたところで、もはや「ながら」は単なる快速でしかなかったから、空席問題の解決とはならない。

旅路こそ、そこそこ良い感じでリラックスしながら終着駅までを乗り通すことができた。しかし、このような有様では、列車がいつまで持ってくれるか分からない。「ながら」の運用事業者は、言うまでもなく、JR東海とJR東日本だった。いつまでも赤字を垂れ流してばかりの列車を走らせておくわけにはいかなかったはずだ。

実際、上記のような惨状だったからか、同年12月、ダイヤ改正のお知らせとともに定期運行終了の告知が出された1)2008年12月19日付のJR東日本の報道発表資料(2009年3月ダイヤ改正について)というのも、決しておかしな話ではなかった。「あのときに乗車しておいて本当に良かった」と思ったのであった。

この列車のウリは「名古屋都市圏と静岡と東京との間を安くラクに移動できる」という部分であったのだが、同区間は高速バスが多数走っている分、どうしてもそちらに客が流れてしまう。何よりJR東海のドル箱路線である「東海道新幹線」も並走している。JR東日本はどう思っていたか分からないが、少なくともJR東海は廃止したくて仕方なかったことだろう。

「ムーンライトながら」の記されている方向幕(東京行き、定期運行分のもの)

 

余談:臨時「ムーンライトながら」の今後

現在は、国鉄時代の特急用車両「国鉄185系電車」を用いた臨時「ながら」のみが、お盆休みや年末年始などの多客期において運行されているようだ。ただし、「青春18きっぷ」の使えないゴールデンウィークでは運行されていないし、臨時列車そのものも運行日数が減ってきているという。

今冬について言えば、なんと、年が明けてからの運行が一切なくなってしまった。2)「ムーンライトながら」2020年正月に運転せず。冬の運転日数は過去最低に | タビリス毎年のことながら、春も夏も冬も徐々に運行が少なくなっていて、そのうち臨時「ながら」でさえも廃止されてしまうのではないか、という説が囁かれているほどだ。

実際のところ、同列車のほとんどの乗客が「青春18きっぷ」の利用者でもあるため、JR東海としてもJR東日本としても、収益はないに等しいといったところではないだろうか。貴重な人的資源、車両などを投資してまでわざわざ運行するほどの旨味は、両社にはないと思われる。

一昨年(2018年)の3月末でJR西日本の超赤字路線「三江線」が運行終了、廃線と相成ったように、従来どおりの運行が続けば、そのうち臨時「ながら」も廃止になるのではないかと思う。「青春18きっぱー」には辛い現実が待っていることだろうけれども、JR各社も慈善事業をやっているわけではない。

もし廃止にしたくないのなら、何かしらの案を早急に打たないといけないことだろう。けれども、高速バスも新幹線も走っている以上、それらにどうやって太刀打ちできようというのだろうか?

脚注   [ + ]